償却資産税申告書はなにをやる?提出の必要性から具体的な手順まで徹底解説

「償却資産税申告書ってなにをやるの?本当に提出の必要性はあるの?」とお悩みではありませんか。結論として、事業で使う備品や機械などの償却資産を所有している場合、固定資産税の一種として毎年1月31日までに市区町村への申告義務があります。たたとえ免税点(令和9年度分から180万円)未満でも申告は必要で、未提出にはペナルティの恐れもあります。この記事では、申告の必要性や対象資産の具体例、申告書の書き方からeLTAXを使った電子申告の手順までを徹底解説します。読むことで、迷わずスムーズに申告手続きを完了できるようになります。

目次

1. 償却資産税申告書とは?基礎知識と提出の必要性

1.1 償却資産税申告書とは何か

償却資産税申告書とは、事業のために用いている構築物や機械、備品などの「償却資産」について、その所有状況を各市町村(東京23区の場合は都税事務所)へ報告するための書類です。償却資産にかかる税金は固定資産税の一種であり、土地や家屋と同じように、毎年1月1日(賦課期日)時点で所有している資産に対して課税されます。

土地や家屋の場合は登記情報などから自治体が所有者を把握できますが、償却資産については自治体が独自にすべてを把握することが困難です。そのため、事業主自身が所有している償却資産の種類や取得価額、取得年月などを自己申告する制度がとられています。この申告に基づいて自治体が評価額を計算し、納めるべき税額を決定する仕組みとなっています。

1.2 提出の必要性と申告義務について

償却資産税申告書の提出は、地方税法によって定められた事業主の義務です。毎年1月1日現在で事業用の償却資産を所有している法人および個人事業主は、原則として1月31日までに申告書を提出しなければなりません。

この申告は、正しい固定資産税額を算出するための重要なプロセスです。「税金がかかるほどの資産を持っていない」「赤字で利益が出ていない」といった状況であっても、事業用の資産を所有している限り、基本的には申告の対象となります。申告書を提出することで、自治体は適正な課税標準額を算出し、公平な税負担を実現することができます。

1.3 提出しない場合のペナルティ

償却資産税申告書を正当な理由なく提出しなかった場合や、虚偽の申告を行った場合には、法律に基づく厳しいペナルティが科される可能性があります。期限までに申告を行わなかった場合は、地方税法第386条の規定により、10万円以下の過料が科されることがあります。

また、虚偽の申告をした場合には、地方税法第385条(固定資産税に係る虚偽の申告等に関する罪)により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

なお、従来「懲役」とされていた刑は、令和7年6月1日施行の刑法改正により「拘禁刑」に一本化されています。古い解説記事では「懲役」と記載されているものもありますのでご注意ください。さらに、申告漏れが後から発覚した場合には、過去に遡って課税されるだけでなく、本来納めるべき税金に加えて延滞金が加算されるため、結果的に大きな金銭的負担を強いられることになります。適正かつ期限内の申告を心がけることが不可欠です。

2. 償却資産税申告書ではなにをやる?対象となる資産

償却資産税申告書において「なにをやるか」といえば、その年の1月1日現在で事業のために所有している償却資産を把握し、自治体へ正確に報告することです。ここでは、具体的にどのような資産が申告の対象になるのか、また対象外となる資産との見分け方について詳しく解説します。

2.1 申告対象となる償却資産の具体例

償却資産とは、土地や家屋以外の事業の用に供することができる資産で、減価償却の対象となるものを指します。申告対象となる償却資産は、主に以下の6つの種類に分類されます。

  • 構築物:舗装路面、フェンス、看板、屋外の照明設備など
  • 機械及び装置:製造設備、旋盤、ポンプ、太陽光発電設備など
  • 船舶:ボート、客船、漁船など
  • 航空機:飛行機、ヘリコプターなど
  • 車両及び運搬具:フォークリフト、ブルドーザーなどの大型特殊自動車(自動車税の対象外のもの)
  • 工具・器具及び備品:パソコン、コピー機、デスク、応接セット、エアコン、医療機器など

特にオフィスで使用するパソコンやデスクなどの備品、店舗の看板や内装造作などは申告漏れが発生しやすいため注意が必要です。事業のために使用している資産であれば、遊休資産や未稼働の資産であっても申告対象となります。

テナントの内装造作は借主が申告します

特に申告漏れが多いのが、テナントとして借りた事業所や店舗に施した内装工事・建築設備です。

建物そのものは家屋として大家さんに課税されるため「内装も大家さんの負担では」と考えてしまいがちですが、賃借人が自ら取り付けた内装・造作や建築設備は、賃借人自身の償却資産として申告する必要があります(地方税法343条9項)。自治体の申告の手引にも、申告すべき方として「内装・造作及び建築設備等を取り付けた賃借人(テナント)等の方」が明記されています。

具体的には、間仕切り、造作家具、床・壁・天井の仕上げ、テナント側で設置した照明設備や空調設備などが該当します。店舗の開業時に数百万円規模の内装工事を行った場合、その全額が償却資産税の課税対象となりますので、開業初年度の申告では必ず確認してください。

2.2 申告対象外となる資産との違い

事業用に使用している資産であっても、すべての資産が償却資産税の申告対象となるわけではありません。以下の資産は申告の対象外となりますので、帳簿上の固定資産としっかり区別することが重要です。

  • 土地・家屋:これらは別途、固定資産税(土地・家屋)として課税されるため、償却資産税の申告は不要です。
  • 自動車税・軽自動車税の対象となる車両:営業用の乗用車やトラックなどは、自動車税等が課されるため対象外です。
  • 無形固定資産:ソフトウェア、特許権、商標権などは形がないため対象外となります。
  • 繰延資産:創立費や開業費などは対象外です。
  • 少額の減価償却資産:耐用年数が1年未満の資産や、取得価額が10万円未満で全額をその年の経費としたもの、または取得価額が20万円未満で3年間の「一括償却資産」として処理したものは対象外となります。
  • リース資産:原則としてリース会社(所有者)が申告するため、借主側の申告は不要です。ただし、リース期間終了後に所有権が移転する契約(所有権移転ファイナンスリース)など、実質的に売買と同様と認められるものは借主が申告します。契約書で所有権の所在を確認してください。なお、割賦販売により所有権が売主に留保されている資産は、原則として買主が申告します。

中小企業者等の特例により少額減価償却資産を全額経費(即時償却)とした場合は、償却資産税の申告対象となる点に十分ご注意ください。法人税や所得税の計算上は経費になっても、償却資産税では申告が必要です。

この特例は令和8年度税制改正で拡充され、取得価額の基準が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられました(令和8年4月1日以後に取得したものが対象。適用期限は令和11年3月31日まで)。

ここで注意が必要なのは、即時償却できる範囲が広がるということは、申告漏れのリスクも同じだけ広がるという点です。即時償却した資産は固定資産台帳に残らないことが多いため、申告書の作成時に拾い漏れが起きやすくなります。

整理すると、取得価額ごとの扱いは次のとおりです。

取得価額処理方法償却資産税の申告
10万円未満一時に損金算入した場合対象外
20万円未満一括償却資産(3年均等償却)対象外
40万円未満中小企業者等の特例で即時償却対象
いずれも通常の減価償却をした場合対象

なお10万円未満・20万円未満の資産であっても、これらの処理を選ばず通常どおり減価償却している場合は申告対象となります。判断の分かれ目は金額ではなく、どの処理方法を選んだかである点を押さえてください。

2.3 免税点未満でも申告の必要性はあるのか

償却資産税には「免税点」という制度が設けられています。同一の市区町村内に所有する償却資産の課税標準額の合計が免税点未満の場合、償却資産税は課税されません。

この免税点は、令和8年度税制改正により150万円から180万円に引き上げられました。適用は令和9年度分以後の固定資産税で、実務上は令和9年1月に提出する申告から影響します。つまり、課税標準額の合計が180万円未満であれば償却資産税は課されません。

なお、あわせて家屋に係る免税点も20万円から30万円に引き上げられています。

しかし、ここで疑問に思うのが「税金がかからないなら申告書を提出しなくてもよいのではないか」という点です。結論から言うと、課税標準額が免税点未満であっても、償却資産税申告書の提出は原則として必要です。

なぜなら、所有している資産の合計額が免税点未満であるかどうかは、提出された申告書をもとに市区町村が計算して最終的に判断するからです。自己判断で申告を怠ると、自治体からの問い合わせや調査が入る原因となります。事業を行っている以上、資産の増減にかかわらず毎年必ず申告を行うのが正しい手続きとなります。

3. 償却資産税申告書の具体的な提出手順

償却資産税の申告が必要な対象資産を把握した後は、実際に申告書を作成し提出するプロセスに進みます。ここでは、申告書の準備から具体的な書き方、提出期限や提出先、さらに便利な電子申告(eLTAX)の利用方法までを詳しく解説します。初めて申告を行う方でも迷わないよう、ステップごとに確認していきましょう。

3.1 申告書の作成と準備

申告書を作成する前に、まずは自社が所有する償却資産のデータを整理する必要があります。固定資産台帳や減価償却費の計算書類などを手元に準備し、取得年月、取得価額、耐用年数などの情報を正確に把握することが重要です。これらの情報が揃ったら、実際の申告書への記入を進めます。

3.1.1 一般的な申告書の書き方

償却資産申告書(第26号様式)は、申告の基本となる書類です。まずは、納税義務者の氏名や名称、住所、個人番号または法人番号などの基本情報を正確に記入します。続いて、前年中に増加または減少した資産の合計額や、本年1月1日現在における評価額などを記載します。すでに前年度に申告を行っている場合は、市区町村からプレプリント(印字)された申告書が送付されることが多いため、内容に変更や追加がないかを確認しながら記入を進めるとスムーズです。

3.1.2 種類別明細書の書き方

種類別明細書(第26号様式別表)は、個々の償却資産の詳細を記載する重要な書類です。「増加資産・全資産用」と「減少資産用」に分かれています。新たに取得した資産については、資産の名称、数量、取得年月、取得価額、耐用年数を一つひとつ正確に記入します。ここで注意が必要なのが、償却資産税の評価は国税(法人税・所得税)の減価償却とは計算方法が異なるという点です。

耐用年数は国税と同じ基準(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)を用いますが、償却の計算方法は国税と一致させません。償却資産税では、耐用年数に応じた所定の減価率により一律に評価額を計算します。国税で定額法を採用している場合でも、償却資産税の評価は別の計算によることになります。

あわせて、次の点にもご注意ください。

・圧縮記帳は適用されません。補助金等で圧縮記帳を行った資産も、圧縮前の取得価額で申告します

・特別償却・割増償却は適用されません。これらを適用した資産も、通常の評価額で申告します

・評価額には下限があり、取得価額の5%が最低限度となります。耐用年数を過ぎて国税上の帳簿価額が1円になっている資産でも、償却資産税では取得価額の5%が残り、課税対象であり続けます

圧縮記帳後の金額や特別償却後の金額で申告してしまう誤りは実務で頻発します。固定資産台帳の金額をそのまま転記するのではなく、取得価額ベースで確認するようにしてください。また、廃棄や売却によって手放した資産がある場合は、減少資産用の明細書に記載し、課税対象から外す手続きを忘れないようにしましょう。

3.2 提出期限と提出先

償却資産税の申告には厳格な期限が設けられています。毎年1月1日現在で所有している償却資産について、同年の1月31日までに申告を行う必要があります(1月31日が土日祝日の場合は翌開庁日)。なお、令和9年1月31日は日曜日にあたります。そのため令和9年度分の申告期限は、令和9年2月1日(月)となる見込みです。ただし自治体によって取扱いが異なる場合がありますので、送付されてくる案内でご確認ください。提出先は、該当する償却資産が所在する市区町村の役所(税務課などの固定資産税担当窓口)です。複数の市区町村にまたがって資産を所有している場合は、それぞれの市区町村ごとに申告書を作成し、提出しなければならない点に注意してください。

3.3 eLTAXを利用した電子申告の手順

近年では、紙の申告書を郵送や窓口で提出する代わりに、地方税ポータルシステム「eLTAX(エルタックス)」を利用した電子申告が普及しています。eLTAXを利用すれば、オフィスや自宅から24時間いつでも申告手続きが可能となり、複数の市区町村への申告も一括で行えるため大幅な業務効率化が見込めます。

eLTAX(エルタックス) https://www.lta.go.jp

電子申告を行う手順としては、まずeLTAXのホームページから利用届出(新規)を行い、利用者IDを取得します。次に、専用の無料ソフトウェア「PCdesk」をダウンロードしてパソコンにインストールします。PCdesk上で申告データを作成するか、対応している市販の税務・会計ソフトで作成したデータを組み込み、電子署名を付与して送信すれば申告完了です。事前の準備としてマイナンバーカードなどの電子証明書が必要になる場合があるため、余裕を持って準備を進めることをおすすめします。

4. まとめ

償却資産税申告書は、事業に用いる構築物や備品などの償却資産を所有するすべての事業者に提出義務があります。課税標準額が免税点(令和9年度分から180万円)未満であっても、市区町村が所有状況を把握するために申告自体は必要となる点に注意しましょう。

正当な理由なく申告を怠ると、延滞金や過料などのペナルティが科される恐れがあるため、毎年1月31日の提出期限を厳守することが重要です。申告には手間がかかりますが、eLTAX(地方税ポータルシステム)を利用した電子申告を活用することで、手続きをスムーズに進めることができます。漏れのない正確な申告を心がけましょう。

※本記事に記載した制度内容は2026年9月時点の情報に基づいています。免税点の引上げは令和9年度分以後の固定資産税について適用されます。償却資産の判定基準や申告書の様式、提出方法の運用は市区町村によって異なる場合があるため、実際の申告にあたっては送付される案内および各自治体の申告の手引をご確認ください。個別の判断にあたっては税理士にご相談ください。

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