年末調整の時期になると耳にする「法定調書合計表」と「支払調書」。本記事では、これらの書類の提出対象や、具体的に何をすればよいのかを分かりやすく解説します。結論から言うと、法定調書合計表は源泉徴収した税金等をまとめた書類で税務署への提出が義務付けられており、支払調書は一定金額以上の報酬や不動産使用料などを支払った場合に作成・提出が必要です。この記事を読むことで、各書類の作成基準から1月末の提出期限までのスケジュール、実務の流れが網羅的に分かり、迷わずスムーズに手続きを進められるようになります。
1. 年末調整関連の法定調書合計表と支払調書とは?概要を解説

年末調整の時期が近づくと、企業の経理や人事担当者はさまざまな書類の作成と提出に追われることになります。その中でも特に重要となるのが「法定調書合計表」と「支払調書」です。これらの書類は、企業が1年間に誰に対していくら支払い、どれだけの所得税を源泉徴収したのかを税務署に報告するための重要な書類です。ここでは、それぞれの書類の基本的な概要と、なぜ作成・提出が必要なのかについて詳しく解説します。
1.1 法定調書合計表の概要と提出の目的
法定調書合計表(正式名称:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)とは、企業が作成した各種の法定調書(源泉徴収票や支払調書など)の件数や支払金額、源泉徴収税額を種類ごとに集計し、一枚にまとめた表のことです。法定調書とは、所得税法などの法律によって税務署への提出が義務付けられている資料の総称を指します。
この合計表を提出する主な目的は、税務署が企業や個人事業主の正確な所得状況や納税状況を把握し、適正な課税を行うためです。税務署は、提出された法定調書合計表と個別の法定調書を照らし合わせることで、支払者側と受領者側の申告内容に矛盾がないかを確認します。これにより、申告漏れや脱税を防ぐという重要な役割を担っています。
1.2 支払調書の概要と源泉徴収票との違い
支払調書とは、企業が外部の個人事業主やフリーランス、税理士などの専門家に対して、報酬や料金を支払った際に作成する書類です。具体的には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」や「不動産の使用料等の支払調書」など、支払いの内容に応じていくつかの種類が存在します。支払調書には、支払先の氏名や住所、年間の支払金額、および差し引いた源泉徴収税額が記載されます。
一方で、よく似た書類として「源泉徴収票」があります。両者の最大の違いは対象となる支払いの性質と受領者です。源泉徴収票は、企業が雇用契約を結んでいる「従業員(給与所得者)」に対して支払った給与や賞与を証明する書類です。対して支払調書は、雇用関係にない「外部の取引先(事業所得者など)」への支払いを証明するものとなります。どちらも税務署への提出が必要な法定調書の一部ですが、誰に対するどのような支払いかによって明確に区別して作成する必要があります。
令和9年1月から「源泉徴収票のみなし提出」が始まります
法定調書の提出実務について、押さえておくべき大きな変更があります。
令和9年1月1日以降、給与支払報告書を市区町村に提出した場合には、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。これにより、税務署への源泉徴収票の提出が不要になります。
令和8年分の提出(令和9年1月)から適用されるため、年末調整後の業務フローが変わります。社内の手順書やチェックリストを更新しておきましょう。
なお、従業員本人への源泉徴収票の交付義務は従来どおり残ります。また、法定調書合計表そのものの提出は引き続き必要です。変更されるのは税務署への源泉徴収票の提出部分である点にご注意ください。具体的な取扱いについては、国税庁の最新の案内をご確認ください。
2. 法定調書合計表と支払調書の提出対象

年末調整や決算の時期が近づくと、どの支払いが支払調書の対象になるのか、誰が法定調書合計表を提出しなければならないのか迷う方も多いでしょう。ここでは、支払調書の提出が必要となる具体的な取引や金額の基準、そして法定調書合計表の提出対象者について詳しく解説します。
2.1 支払調書の提出対象となる取引と金額基準
支払調書は、事業者が外部に支払いを行ったすべての取引に対して作成・提出するものではありません。所得税法などの法律によって定められた特定の取引であり、かつ一定の金額基準を満たした場合にのみ提出義務が発生します。代表的な支払調書の種類ごとに、その基準を確認していきましょう。
2.1.1 報酬や料金等の支払調書の基準
実務上、最も作成する機会が多いのが「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。これは、フリーランスや個人事業主、専門家に対して業務委託費などを支払った場合に作成します。
具体的には、弁護士や税理士、社会保険労務士などへの報酬、原稿料やデザイン料、講演料などの支払いが対象となります。提出が必要となる金額基準は、原則として同一の支払先に対する年間の支払金額の合計が5万円(消費税等を含む)を超える場合です。ただし、報酬の種類によって基準額が異なるため注意が必要です。主な区分は次のとおりです。
5万円を超える場合に提出
弁護士・税理士等の報酬、原稿料、デザイン料、講演料、プロ野球の選手などへの報酬・契約金、モデルへの報酬など
50万円を超える場合に提出
外交員・集金人・電力量計の検針人・プロボクサー等の報酬、バーやキャバレー等のホステス等の報酬、広告宣伝のための賞金など
1回の支払賞金額が75万円を超える場合に提出
馬主に支払う競馬の賞金
実務で多いのは5万円を基準とするグループですが、外交員報酬や広告宣伝のための賞金は50万円が基準となる点を押さえておきましょう。正確な区分は国税庁「法定調書の作成と提出の手引」でご確認ください。
なお金額の判定は、原則として消費税および地方消費税を含めた総額で行いますが、請求書等で消費税額が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判定しても差し支えないとされています。社内で判定ルールを統一しておきましょう。
2.1.2 不動産関連の支払調書の基準
事業用のオフィスや店舗を借りている場合などに作成が必要となるのが、「不動産の使用料等の支払調書」や「不動産等の譲受けの対価の支払調書」です。
「不動産の使用料等の支払調書」は、法人や不動産業者である個人が、地代や家賃、権利金、更新料などを支払った場合に提出対象となります。金額基準は、同一人に対する年間の支払金額の合計が15万円を超える場合です。なお、貸主が法人である場合の取扱いには注意が必要です。法人に支払う不動産の使用料等については、権利金、更新料等のみが提出対象となります。したがって、法人に対して家賃や賃借料のみを支払っている場合、支払調書の提出は必要ありません。
ただし、礼金や権利金、更新料などを支払った場合には提出が必要です。「貸主が法人だから支払調書は不要」と一律に判断すると提出漏れになりますのでご注意ください。この場合、15万円を超えるかどうかの判定も、家賃を含めず権利金・更新料等の合計額のみで行います。
一方、貸主が個人の場合は、家賃・賃借料を含めた年間の支払金額の合計が15万円を超えれば提出対象となります。「不動産等の譲受けの対価の支払調書」については、不動産を購入した際の支払いが同一人に対し年間100万円を超える場合に提出が必要です。
2.1.3 源泉徴収していない支払いも提出対象になります
ここで実務上、最も見落とされやすい点をお伝えします。源泉徴収をしていない支払いであっても、提出基準に該当すれば支払調書の提出が必要です。
支払調書には源泉徴収税額を記載する欄があるため、「源泉徴収していないから支払調書も不要」と判断してしまいがちですが、これは誤りです。次のようなケースでも提出対象になります。
・法人への支払い:報酬・料金の源泉徴収は個人への支払いが対象のため法人には源泉徴収しませんが、支払調書の提出対象となる場合があります
・源泉徴収の限度額以下のため、実際には徴収していない場合
支払調書の提出義務は、源泉徴収の有無ではなく、支払いの内容と金額で判断します。この点を取り違えると提出漏れにつながりますので、年間の支払先リストを作成する際は、源泉徴収の有無にかかわらず対象取引を拾い出してください。
2.2 法定調書合計表の提出対象者
法定調書合計表(正式名称:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)は、税務署に提出する各種法定調書を一つにまとめた表紙のような役割を果たします。
この法定調書合計表の提出対象となるのは、給与所得の源泉徴収票や退職所得の源泉徴収票、前述した各種支払調書など、税務署へ提出すべき法定調書が1枚でも存在するすべての事業者(法人および個人事業主)です。
たとえば、従業員を雇用して給与を支払っている場合や、外部の税理士に報酬を支払って支払調書の提出基準を満たしている場合は、必ず法定調書合計表を作成し、管轄の税務署へ提出しなければなりません。逆に言えば、年間を通じて給与の支払いがなく、支払調書の提出基準を満たす外部への支払いも一切なかった場合には、法定調書合計表の提出は不要となります。
給与所得の源泉徴収票は全員分を提出するわけではありません
ここで押さえておきたいのが、税務署へ提出する給与所得の源泉徴収票には範囲があるという点です。従業員全員分を提出するわけではありません(作成と本人への交付は全員について必要です)。
【年末調整をした方】
・法人の役員で、その年中の給与等の支払金額が150万円を超える方
・弁護士、司法書士、税理士等で、支払金額が250万円を超える方
・上記以外の方で、支払金額が500万円を超える方
【年末調整をしなかった方】
・「扶養控除等申告書」を提出した方のうち、その年中に退職した方等で支払金額が250万円を超える方(法人の役員は50万円を超える方)
・主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため年末調整をしなかった方(全員)
・「扶養控除等申告書」を提出しなかった方(乙欄・丙欄適用者)で、支払金額が50万円を超える方
法定調書合計表には、提出範囲に該当しない方の支払金額も含めた総額を記載したうえで、「そのうち源泉徴収票を提出する方」の人数と金額を別に記載します。この区別を誤ると合計表の数字が合わなくなりますので、給与計算ソフトの判定結果を必ず確認してください。
3. 提出対象者は何をする?作成から提出までのスケジュールと実務

法定調書合計表や支払調書の提出対象となった場合、具体的にどのような作業をいつまでに行う必要があるのでしょうか。ここでは、年末調整の時期に合わせて発生する、作成から提出までの具体的なスケジュールと実務の流れについて詳しく解説します。
3.1 12月から1月にかけてのスケジュール
法定調書合計表と支払調書の作成・提出は、年末調整の実務と並行して行われます。一般的なスケジュールは以下の通りです。
- 12月上旬〜中旬:支払先へのマイナンバー(個人番号)や法人番号の確認・収集
- 12月下旬〜1月上旬:1年間の支払金額と源泉徴収税額の集計、年末調整の計算
- 1月中旬:支払調書および源泉徴収票の作成、各支払先への送付
- 1月下旬:法定調書合計表の作成
- 1月31日まで:所轄の税務署へ法定調書合計表と支払調書(および源泉徴収票)を提出
法定調書の提出期限は、原則として支払いが確定した年の翌年1月31日です。年末年始を挟むため実務期間が短く、計画的に準備を進めることが重要です。
なお、令和9年1月31日は日曜日にあたります。提出期限が日曜日等にあたる場合、期限はその翌日となるため、令和8年分の法定調書の提出期限は令和9年2月1日(月)となる見込みです。ただし、期限直前はe-Taxが混み合うこともあるため、余裕をもって1月中に完了させることをおすすめします。
3.2 支払調書の作成と送付の実務
支払調書を作成する際は、1月1日から12月31日までに支払った報酬や料金、不動産の使用料などの金額と、それに対して源泉徴収した税額を正確に集計します。作成にあたっては、支払先の氏名や名称、住所、マイナンバーまたは法人番号の記載が必須となります。個人事業主などに支払調書を交付する場合、マイナンバーの取り扱いには厳重なセキュリティ対策が求められます。
なお、税務署への提出義務がある支払調書について、支払先本人への交付(送付)は法律上の義務ではありません。しかし、支払先が確定申告を行う際の参考資料として必要とされることが多いため、慣例として1月中旬頃までに送付するのが一般的です。
3.3 法定調書合計表の集計と作成の実務
支払調書や給与所得の源泉徴収票の作成が完了したら、それらのデータをまとめる「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成します。この書類には、提出する各種法定調書の枚数や、1年間の支払金額の総額、源泉徴収税額の合計額を記載します。
合計表には、税務署へ提出する範囲の金額だけでなく、提出基準に満たない少額の支払いも含めた「全体の総額」を記載する欄と、「そのうち税務署へ提出する分の金額」を記載する欄があります。集計ミスが起きやすい部分ですので、会計ソフトや給与計算ソフトのデータと照合しながら慎重に作成しましょう。
3.4 税務署への提出手続き
作成した法定調書合計表と支払調書は、期限までに所轄の税務署へ提出します。提出方法には以下の3つの手段があります。
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用した電子データ送信
- CD-ROMやDVD-ROMなどの光ディスク等による提出
- 書面(紙)での持参または郵送による提出
近年は業務効率化の観点から、e-Taxを利用したオンラインでの提出が強く推奨されています。e-Taxを利用すれば、税務署へ赴く手間や郵送代を削減できるだけでなく、マイナンバーなどの個人情報を含む書類を安全に提出することが可能です。期限直前はシステムが混み合うこともあるため、余裕を持って送信手続きを完了させましょう。
4. 法定調書合計表と支払調書に関するよくある疑問

法定調書合計表や支払調書の作成・提出にあたって、実務担当者が抱えやすい疑問について解説します。特に、支払先への対応や提出方法に関するルールは誤解が生じやすいため、正確に理解しておくことが重要です。
4.1 支払調書は必ず発行しなければならないのか
支払調書に関して最も多い疑問の一つが、「取引先(支払先)に対して支払調書を必ず発行・送付しなければならないのか」という点です。結論から言うと、支払調書は税務署への提出が義務付けられている書類であり、支払先への交付義務はありません。
源泉徴収票が従業員等の受給者に対して交付義務があるのに対し、報酬や料金等の支払調書には法的な交付義務が定められていません。しかし、日本のビジネス慣習として、支払先が確定申告をスムーズに行えるよう、年明けに支払調書を送付する企業が多く存在します。近年では、ペーパーレス化や事務負担軽減の観点から、支払先への支払調書の送付を廃止する企業も増えています。もし送付を取りやめる場合は、事前に取引先へ通知しておくとトラブルを防ぐことができます。
なお、税務署へ提出する支払調書には支払先のマイナンバー(個人番号)や法人番号を記載する必要がありますが、仮に支払先へ控えとして送付する場合には、情報漏洩を防ぐためにマイナンバーを印字しないよう注意が必要です。
4.2 電子データでの提出が義務化される条件とは
法定調書合計表および各種支払調書は、書面(紙)での提出のほか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)や光ディスク等を利用した電子データでの提出が可能です。さらに、一定の条件を満たす企業においては、電子データによる提出が法律で義務化されています。
ここで必ず押さえておきたいのが、令和9年1月の提出分から義務基準が大きく変わるという点です。
これまでは、前々年に提出すべきであった法定調書の種類ごとの枚数が「100枚以上」である場合に電子提出が義務づけられていました。これが令和9年(2027年)1月1日以後に提出する法定調書から「30枚以上」に引き下げられます。
判定は前々年に提出した枚数で行うため、令和9年1月に提出する分については令和7年中に提出した枚数が基準となります。
この基準は「法定調書の種類ごと」に判定されるため、たとえば給与所得の源泉徴収票が30枚以上であっても、報酬の支払調書が30枚未満であれば、報酬の支払調書は書面での提出も認められます。
これまで書面で提出していた多くの中小企業が、新たに義務の対象となります。まだ電子提出に対応していない場合は、年末調整の繁忙期に入る前に、給与計算ソフトや会計ソフトのe-Tax連携機能を確認し、テスト送信を行っておくことをおすすめします。
電子データでの提出義務がない場合でも、e-Taxを利用することで、税務署へ出向く手間や郵送コストを削減でき、事務処理の効率化が図れます。年末調整や法定調書の作成機能を持つ給与計算ソフトやクラウド会計システムを導入している場合は、そのままe-Taxと連携してスムーズに提出できることが多いため、積極的な活用をおすすめします。
5. まとめ
年末調整に関連する法定調書合計表と支払調書は、税務署が適正な課税を行うために不可欠な書類です。報酬や不動産使用料など、定められた基準額を超える支払いをした事業者が提出対象となります。
対象者は書類を作成し、翌年1月31日までに所轄の税務署へ提出しなければなりません。支払先への支払調書の交付は法的な義務ではありませんが、円滑な取引のために送付するのが一般的です。
また、電子提出の義務基準は、令和9年1月1日以後に提出する法定調書から「前々年の提出枚数が30枚以上」に引き下げられます。これまで対象外だった事業者も新たに義務の対象となる可能性があります。要件を確認し、期限に遅れないよう計画的に準備を進めましょう。

※本記事に記載した制度内容は2026年9月時点の情報に基づいています。支払調書の提出範囲や金額基準は種類ごとに細かく定められているため、実際の作成にあたっては国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」で最新の内容をご確認ください。個別の判断にあたっては税理士にご相談ください。










