法人・個人のメリット・デメリット <会計の窓> 法人・個人のメリット・デメリット <会計の窓>

事業を始める方にとって、事業形態をどうするかを悩まれる方は多いと思います

ここでは「法人」と「個人」のメリット・デメリットを確認しながらよりよい選択にする参考情報をご案内させていただきます
※法人にはいくつか形態がありますが、ここでは「株式会社」を前提として記載

 

☆ 法人成りメリット・デメリット(法人有利・個人有利)一覧表

 以下は、メリット・デメリットを表にしてみました

 各項目について詳細は表以下で触れていくことにします

 

 法人化するとメリットがある事項

 ・社会的信用力

 ・役員報酬

 ・生命保険料

 ・手当、慶弔金

 ・役員社宅

 ・繰越欠損金

 

個人事業主のメリットがある事項

 ・消費税

 ・社会保険

 ・交際費

 ・設立・清算費用

 ・赤字でも税金

 

  1. 社会的信用力について

一般的に個人に比べ会社の方がなんとなく「安心感」があるのではないでしょうか

それは法人という組織が整い、業務処理がきちんとなされている前提から正確な決算書が作成されているという事実からみても「ちゃんとしている安心感」につながっているのではないかと思います

また、実際に法人と個人の決算書は違います

法人ではより細かい明細が求められそれを提示しなければなりません

ゆえにその社会的信用から、例えば銀行などの金融機関から融資を受けやすくなります

ですので、法人の方が有利であるといえるでしょう

 

  1. 消費税について

まず事業を始めるにおいて、消費税は最も気をつけておかなければならない税金の一つだということをお話しておかなければなりません

赤字年度では基本所得税・法人税は発生しませんが(法人税均等割りを除く:以下で詳細)、消費税は納税の可能性があること、また消費税はその選択一つで税金の支払い額に大きな違いがでてしまうからです

 

その「消費税」について、基本的には法人・個人どちらの形態も事業を始めて2年間は「免税(消費税を納めなくてもよい)」とされています。判定としては基準期間(法人は前々事業年度、個人は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えているか否かを基準に免税事業者課税事業者(消費税を納めなくてはならない事業者)がなされます

法人の場合も個人の場合も事業初年度、翌期目も前々年度は存在していないので、当然課税売上高はないわけですから、免税となるわけです

ただ最初に「基本的には」と述べているのは、特別なルールがあるからなのです

☆特別ルール①

 事業年度開始の日に資本金又は出資金の額が1,000万円未満であること

 → 1,000万円以上になると課税事業者となります

☆特別ルール②

特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合で、特定期間における給与等の支払額も1,000万円を超える場合

→こちらは二期目の話になりますが、「特定期間」において上記の場合は課税事業者になります

 「特定期間」とは、法人でいうところの1期目期首から6か月間のことをいい、個人でいうところの1-6月になります

※こちらは1期目の事業年度(課税期間)が12か月の場合です

短期事業年度の場合は変わってきますが、ここでは割愛いたします

法人成りの予定が初年度からある程度の金額が見込まれる場合はこちらが重要になっていますので、別途ご相談ください

 

事業を始めたばかりであれば、よほどのことがない限りこの特別ルール①、②に該当することは珍しいことです

よって、この法人・個人とも基本的に2年間の免税事業者という特典をフルで生かすためにはまず、個人事業者で事業を始め、この2年間が過ぎた後、例えば3年目に入るタイミングで法人成りすれば、また更に2年間の免税事業者になれるので最長4年間の免税事業者になれるわけです

これを法人から始めますと、最長2年間の免税事業者となりますので、よほどのことがなければ個人事業者から始めるのがおすすめといえるでしょう

 

  1. 役員報酬について

個人の場合は売上から諸経費を引いた額、残ったお金が事業主の所得となります

しかし、法人の場合は会社から「役員報酬」という形で給与がだされ、またそれが  経費として認められるので経費が増えてその分利益が少なくなり、ひいては、利益にかかる税金の額が少なくなるので、個人の場合と大きく異なるところでしょう

極端な例を言えば、例えば個人の所得(売上から諸経費を引いた額)が1,000万円であったとします

個人の場合そこに税率がかかり所得税を納めることになるのですが、法人に置き換えた場合に社員に対して給与を支払う(社長だと役員報酬)と給与所得控除という経費になります

仮に役員報酬として1,000万円支払うことにします

すると、利益が0円になるわけですから税金は0円になります

もちろん受け取った役員報酬についても所得税がかかってきますが、給与所得として受け取った場合、給与所得控除の制度が利用でき、その分節税効果がでてきます

利益が同じであれば事業所得より給与所得で受け取ったほうが税金は安くなります

つまり、役員報酬として社長の給料を経費計上できることはとても重要な法人の有利な点といえます

ただ、恣意性の排除等から役員報酬の額が原則として最初に定めた額が期中同額であることや賞与に関しても事前に届け出をしておいた額でないと経費として認められない、また増えた分社会保険料や所得税も増えるなど注意事項はあります

でないと、利益がでた分だけ経費にしてしまうことなどができてしまうからです

それを避けるために役員報酬については法人税法の細かい規定があります

 

  1. 社会保険について

この社会保険というのは「年金」「健康保険(介護保険)」「雇用保険」「労災保険」をいうのですが、ここでは「年金」「健康保険(介護保険)」について述べてゆきます

原則として、法人の場合はたとえ社長1人の会社であろうと社会保険に加入する義務が生じます

しかし、個人の場合は常時雇用している従業員が4人以下であれば任意適用ということになり事業所として入っても入らなくてもどちらでも良いことになっています  (※美容師個人事業主様の場合は人数に関係なく任意とされています)

この社会保険に関して、基本的にその社会保険料は労使折半になっています

つまり、年金も健康保険も会社が従業員負担分と同額を納めることになるのです

また厚生年金は国民年金よりも高く、その分将来給付も多くなるという関係にありますが、これから従業員を増やしていくときに人件費同等の必要経費として考えておかなくてはならない項目の一つです

そして4人以下であればこの強制適用がありませんので、開業当初の間は会社負担分である経費がおさえられるので個人の方が有利であるといえるでしょう

ただ、将来従業員のことを考えればいずれ加入することを考えておくべきではないかと思います

 

  1. 生命保険料について

個人で生命保険に加入したとしても、それは事業経費にできず、確定申告時に生命保険料控除をうけられるだけです

事業を守るための保険というより、生活を守るための保険と位置づけられ事業経費として取り扱いができないからです

一方、法人では保険商品のタイプによっては経費計上できる割合はさまざまですが、

生命保険に加入することができ、経費とすることができます

これは、会社としてその経営や労働力を維持させるための支出として費用認識されるからです

経費に算入できる分法人有利となります

 

  1. 交際費について

交際費が個人にとって有利になるのは、交際費としての枠がなく、無制限に事業経費とすることができるからです

もちろん、事業に関連する支出であることが前提ですが

一方、法人では冗費節約という観点から、資本金に応じて交際費の金額が経費として認められなくなります

資本金や年いくらまでの交際費なら、といった細かいところは割愛しますが、規模が小さい法人ならば個人との差はそこまで大きくなりません

 

  1. 手当・慶弔金について

例えば、出張日当などは規定を定めて適正に払われていれば、法人の場合は経費にすることができます

しかし、個人の場合には事業経費になりません。ですので、法人有利といえます

 

  1. 設立・清算費用について

法人は設立にあたり、登記をしなければなりません。そのための費用がかかります

また先の話になりますが、精算時(会社を閉じようとするとき)も細かい手続きが必要になります

個人の場合は登記の必要もないので、手間暇の費用がかかる分個人有利ということになります

 

  1. 役員社宅について

これは法人でしか認められない制度です

法人では役員の社宅を会社が借り上げ、社宅として個人に貸し出すことができます

その場合、役員が負担するのは法人が支払う賃料よりずっと低い金額でも借りられます

また、法人で社宅を所有することもできます。社宅を法人で所有した場合は、修繕費や維持費も法人の経費になります

注意点としては、法人所有の場合で将来個人に名義を移そうとすると不動産所得税や登録免許税など再度負担することになるところです

長期的な観点からは有利不利の判断は難しいところです

 

  1. 赤字でも税金を払う

個人の場合、最終利益が赤字であれば、所得税はかかりません

一方、法人の場合は赤字であっても、法人税均等割りという税金がかかり支払わなければなりません(東京都の場合7万円ほど)これは、いくら赤字であっても、公共のものを会社として利用しているのでその利用料といったものになります

個人の場合は、事業をしていてもかかりません

ですので、個人有利となります

 

  1. 繰越欠損金について

繰越欠損金とは、例えば今期赤字決算になっていて翌期に黒字決算になった場合、

個人も法人も青色申告者に限りますが、個人の場合3期分、法人の場合10期分

(平成30年4月1日以後開始した事業年度)繰り越すことができます

開業当初や事業拡大などたまたま赤字になっていしまってもその翌期に黒字になっていれば前期の赤字分と相殺してくれるので10期繰り越せる法人の方が有利といえます

 

事業を始めるにあたり、売上・経費・利益の予想をたて、まずはその実現に向けて頑張っていく

そして、その成果を見ながら、ある時は軌道修正も必要になるかもしれません

最初は何が起こるかわかりません

ですから、ゆっくりどっしり余裕をもって行動したいものです

もし私が事業を始めるなら、特段の事情がない限り個人で始めるでしょう

そして実際の事業を見ながら、タイミングを見計らって法人成りします

上記にメリット・デメリットを列挙してきましたが、どれも少なくとも1年はどうなるか始まってしまわないとわからないものです

しかし、消費税だけは遅くとも3期目から大きく関わってしまうものです

そして負担する金額もどれよりも大きくなる可能性が高いでしょう

ゆえに、最大限メリットを生かせる個人事業者から始めようと思うのです

もちろん個々に立場も異なりますので、みなさまのケースの参考になれば幸いです

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